- 2050年
- 人口推計
- 地域一体型
- 域密着型
- 空室
- 老人社会
不動産業界に影を落とす2020年問題、2025年問題、その先にある2050年問題。2017年1月に日本銀行が「地域経済報告」の紙面で賃貸住宅市場に警鐘を鳴らしたことにショックを受けた関係者は多かったのではないだろうか。
2050年の不動産業界を語る上で欠かせない2020年問題と2025年問題
団塊世代が後期高齢者に到達する2025年、日本は未だかつて無い高齢社会を迎え、高齢人口の急激な増加により社会保障や財政赤字など経済に大きな影響が及び始める。2025年の65歳以上の人口は3,657万人(30.3%)に、75歳以上の人口は2,179万人(18.1%)に達するとされ、認知症患者は700万人超え、軽症者や予備軍を含めると1,200万人以上が認知症となるとも示唆されている。この団塊世代の子ども達、団塊ジュニアは2020年に40代後半に突入する。そして、団塊ジュニアが後期高齢者となるのが2050年なのだ。
2050年前後の人口推計はさらに厳しい
目を疑うような数値は続く。65歳以上の人口予測のピークは2042年の3,878万人、当然ながら75歳以上の割合は増加し、2055年には総人口の26.1%(2,401万人)との予測だ。出生率の上昇は見込めず、65歳以上の1人に対する20~64歳の推計人口は2012年時点で2.4人だったものが2050年には1.2人といわれている。
労働人口の減少が招く大都市集中型の暮らし
若者は仕事を求め、高齢者は利便性を求め都心部に集中するようになる。首都圏においては東京都一極集中が懸念されている。事実、筆者の周囲では、この半年間で決して利便性が悪くない神奈川県横浜市内のマンションから都内のタワーマンションへ移転したリタイヤ世代が3組いる。極点社会の先にある自治体の消滅危機が現実かし始めているといえるだろう。2040年には全国896市町村が消滅危機に面する、との試算もある。
空室率40%?2050年の不動産会社に求められる姿勢
2050年の空室率は40%、家賃は暴落しているといわれる。労働人口1.2人で65歳以上の高齢者1人を支える時代、十分な家賃収入が見込めない賃貸経営に乗り出すオーナーは激減するだろう。ただでさえ人口減少による影響が大きい不動産業界において、世界的にも例がない高齢社会をどう生き抜けばよいのか。少なくとも、これまでとは異なる姿勢で入居者、オーナー、そして地域と向き合わねば生き残りは難しいだろう。
地域密着型から地域一体型へ
大都市圏の物件は、利便性の高さが最重視されるだろう。老老介護やダブルケア人口の急増も視野に、これからの物件構想やリノベーション計画を立てていくことが必要だ。そのためには、様々な事情を抱え大都市へ流入する人々が何を求めているのか、急激な人口増により自治体が抱える問題はなにかを今からリサーチすることが役立つ。高度なヒアリングスキルの習得も鍵となる。2050年に営業マンとなる世代を育てる土台を今から築ければ、長期スパンのテストマーケティングを経て蓄積されたノウハウを2050年に発揮できるであろう。
消滅可能性のある自治体の物件は、新たな付加価値をつけられるかが肝となるであろう。これには、早い段階から「地域づくり」に積極参画することが役立つだろう。一部の自治体では既に、企業や大学、NPO法人を巻き込んだ地域づくりを始めているが、不動産会社の参画は少ない。そこにいち早く参入できれば、通常の営業活動では目にしない生の声を生かした経営戦略が打ち出せる。
地域密着型から地域一体型へ。地域の暮らしを地域の人々と共に過ごし、そこで暮らす人々が必要とする物件を紹介してくれる不動産会社。そんな会社が求められる時代がくるのではないか。2050年、あなたは何歳だろうか。その年齢になった自分や家族が笑顔で過ごしている物件を、地域を築いて欲しい。